NCIS: ニューオーリンズ (S2E10)

Billy and the Kid / 最初の事件

ダイナーで店員2人と海兵隊のネッド・フォード兵曹が射殺される。目撃者から証言を得たラサールは、ハリケーンカトリーナ上陸前夜に殺害されたフィル・ハートが同じことを言っていたのを思い出し、セバスチャンに当時の証拠品を調べさせ、同一犯の仕業だという証拠をつかむまでプライドには黙っておいてほしいと頼む。(スーパー!ドラマTVサイトより引用)   

 

感謝祭エピですが、実質Katrinaエピでした。キングとラサールが初めて一緒に手がけた事件とか、funky Metersの登場とか、盛りだくさんでした。

 

このドラマでハリケーンKatrinaについては何度か触れられてきましたが、ここまで真正面から扱われたのは初めてです。もう10年以上経ちますが、ニューオリンズの人と話していると、Katrinaは今でも決して「過去」ではないし、街の人たちにいろんな影響を与えているのだなぁと感じることがあります。

冒頭の事件は2005年8月28日、Katrina上陸の前日に起こっています。Nagin市長が避難命令を出したとニュースが伝えていましたが、当時のニューオリンズ市長はRay Nagin。なんとこの人、2013年に収賄資金洗浄その他の罪で逮捕、翌年有罪判決を受けて現在服役中です。ニューオリンズの政治腐敗は長らく問題だったものの、実際に刑事罰を受けたのがこの人が初めてなんだとか。

大嵐の中、当時NOPDの刑事だったラサールは通報を受けて現場へ。制服を着ていたのは、制服警官だったからではなく、ハリケーンの時には警察は制服着用が義務付けられているんですね。撃たれた男性フィル・ハートは、犯人は何の模様でもない青いタトゥー(blue tattoo of nothing)を入れていた、と言い残して亡くなります。妊娠中の妻ビリーと、アパートから荷物を出して避難しようとしたところを撃たれたようです。

 

そしてオープニングの後は10年後の現在の事件。フォード兵曹と店員2名が撃ち殺されたのは、フレンチクオーターにあるClover Grillというダイナーです。外装・内装ともそのままなので、実際にお店でロケしたみたいですね。

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現場から逃げて冷凍庫に隠れていたオリヴァー・フレイという男性の証言では、シミのような、何の模様でもない青いタトゥーを入れており、フォードと言い争った後に発砲したそう。ラサールは10年前の事件との関連を疑い、セバスチャンにこっそり依頼をしますが「確証を得るまでキングには黙っていてくれ」と頼みます。

 

フォード兵曹はAlgiersにあるMCSF(Marine Corps Support Facility)で地域貢献の仕事をしていた(実際にAlgiersにあるようです→ここ)。また、Katrina後の市民運動(Green Dot initiativeへの反対運動)をしていたそう。これはキングの説明でもありましたが、Katrina後に一定の地区の住居を取り壊して緑化しようとした政策だそうで、2010年のnola.comの記事にこのプロジェクトの説明や、当時緑色でマークされた地図などが掲載されていました。フォードの自宅もこの対象地区内にあったようで、ブロディとパーシーが捜索に行きます。場所は836 Desire St、なんと実際にこの住所にあった家が撮影にも使われてました。

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nola.comの地図によれば、厳密には緑化の対象エリアではないみたいです(比較的近所のエリアが2箇所ほどマークされてたけど)。そしてブロディとパーシーが行くとなぜかラサールもいて、部屋で荷物を探っている怪しい人物がいたにも拘らず取り逃がしてしまいました。

 

一方モルグに行ったキング、ロレッタに検視の状況を聞いていたところへセバスチャンが現れ、青いタトゥーの正体は銀皮症の治療薬ロラカルによるものだ、とラサールがいると勘違いしてうっかりキングとロレッタに話してしまう。ドジっ子セバスチャンです。このシーン、キングのことDwayneって呼んでましたね。ファーストネーム呼びの許可出たのかな。。しかしここでラサールの行動の意図を察してしまったキング、「10年前の自分勝手なお前が蘇ったのか?」とお説教。

当時のラサールは出世への野心に燃え、自分のことしか考えてない嫌な奴だったようです。フィル・ハートの事件も出世のかかった「俺のヤマ」くらいにしか思ってなかったと。捜査の最中に出くわしたキングへもなかなか失礼な口をきいてます。ラサールはこの時に初めてキングに会ったと思っていたのですが、実際にはその2年前、2003年のマルディグラで会っていたとのこと。ラサールは忘れてたっぽいけど、パイロット前編でそんな話をしてたのでその後思い出したんでしょうか。なんにせよ、キングとラサールはそれぞれ違う事件の同じ犯人を追っているらしいことが判り一緒に捜査することになりました。

 

セバスチャンがうっかりバラしちゃった話をもとに、ロレッタが検視官の人脈を駆使して刑務所で銀皮症の治療を受け、出所したばかりのエド・タゲットという男を見つけ出します。捜査官ばりの活躍! タゲットは10年前に海軍基地の売店で10万ドルを強盗し、ハートを殺害して車を盗んで逃亡しようとしたところKatrinaで阻まれたので市内のどこかにお金を隠し、出所してそれを探しにきたのだろう。そしてフォードは当時、強盗のあったBelle Chasse(今回字幕が「ベル・チャッセ」となってたけど、今までは「ベル・チェイス」じゃなかったっけ…発音もチェイスに近いです)で働いており、強盗を手引きした疑いが出てきます。しかしフォードの家は捜索してもお金は出てこなかった。強盗は3人組だったようなので、もう1名が持っているのかも。当時の防犯カメラの映像は不鮮明で人物は特定できなかったけど、今ならセバスチャンが解析してくれます。その3名はタゲットと殺されたフォード兵曹、そしてダイナーの冷凍庫に隠れていたオリヴァーでした。オリヴァーを取り調べたが、タゲットが怖くて犯人を知らないと嘘をついたという。そもそも10年前も、基地内に知り合い(フォード)がいたからタゲットに雇われただけで大した面識もない。ましてフィル・ハートも知らない。強盗の後フォードの家で待ち合わせる予定が嵐でできず、その後ダイナーの事件まで会ったこともなかった。あの日タゲットとフォードはダイナーに現れて口論の末撃ち合いになったので、オリヴァーは隠れたのだと。彼とフォードはKatrinaで人生が変わり、今は真っ当に行きているという。"Storm was our salvation"と言っていました。先にも書きましたが、Katrinaはニューオリンズに住む人たちにいろんな影響を与えており、実際にこういう人たちもいたんだろうなぁと思います。

 

オリヴァーの人生が変わったきっかけは、St. Gabrielの遺体安置所へ家族の遺体を探しに行ったこと。ここへは当時、キングとラサールもフィルの遺体を探しに来ていました。ニューオリンズから車で1時間強くらいの所にある街です。ここでキングはロレッタと再会。悲惨な状況の中で、「私ができるのはこれだけ(What else am I gonna do)」と明るく振る舞うロレッタに涙が出そうでした。Katrinaで身元不明の遺体を特定する話はBONESでも出てきたんですが、やはり扱いが違います。BONESが悪いとかじゃなくて(むしろBONES大好きです)、さすがこの番組は敬意を払ってなるべくリアルに再現してるんだろうと思いました。ロレッタの協力でフィルの遺体は見つかりますが、確認したところ別人だった。安置所の状況にショックを受けただけでなく、フィルの遺体が見つかるまで街を出ないと言っていた妻ビリーにもこの事実を伝えないといけない。ラサールは相当参っていましたね。

 

一方で現在。タゲットがAngela St〜Dauphine Stあたりで目撃されます。ここはフォードの10年前の住所(8701 Burgundy St)のすぐ近く。そしてここはフィルたちのアパートと同じ住所。強盗後の集合場所がフォードの部屋だったので、ここにお金が隠されているかもしれない。キングたちが行ってみると、アパートは取り壊されて無くなっていました。ちなみにこの住所、番地は架空ですが、Burgundy StとDauphine Stは1ブロック離れて平行に走っており、Angela Stと交差するあたりはKatrinaの被害も大きかった地域です。

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 (たまに無性にやりたくなる地図書き込みシリーズ)

 

アパートが取り壊されたことで手がかりが途絶えましたが、セバスチャンがフォードの荷物の箱を調べたところ、取り壊された際、アパートの住民の荷物が混じってしまっていたと判明。つまり、お金が入っていると思われるタゲットの荷物も他の住民が持っているかもしれない。ラサールがラボに行き荷物を調べたところ、フィルの妻ハートが持っているのでは、ということに。セバスチャン、久しぶりのDirty Coast Tシャツ!

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ラサールがピンときた理由は、象のぬいぐるみでした。当時、ビリーにフィルの遺体が見つからず事件の手がかりも途絶えてしまったことを伝えに行った際、ビリーが突然産気づいてしまい(アメリカドラマあるある)、その時に象のぬいぐるみをカバンから出してくれと懇願したのです。フィルの子供時代の心の支えだったと。タゲットがフォードの家で漁っていた箱にこのぬいぐるみとビリーの写真が入っていたのです。フォードとビリーたちの荷物が入れ替わっていたので、タゲットはビリーの家にお金を回収に行ったのだろう(ここ、冷静に考えるとちょっと理屈おかしい気もするけどまあいいか)。ちなみに、ビリーの出産直前まで「もうやだ、辞めてアラバマに帰る」と限界だったラサールですが、どうやら出産に立ち会って気持ちが変わったみたいです。突然産気づいて赤ん坊とともに一体感も生まれる展開、アメリカドラマ好きですよねぇ。感動の場面なんだろうけど、さすがにちょっと白けちゃうなぁ…。

なんにせよ、キングとラサールはビリーと娘リサが現在住む家を訪ねます。すでにタゲットが侵入し2人は銃で脅されていましたが、無事救出して解決。10年前の事件にもようやく区切りがつきました。

 

で、最後。事件で感謝祭の準備どころじゃなかったんですが、キングは何やらサプライズを企画していたようで。ラサールが"Commander's Palace?"と訊くと"Even Better"と。Commander's Palaceは、名前だけの登場も含めると随分出てきますね。

キングは地元の名シェフDonald Linkを自分のバーに呼び、ディナーの準備を依頼してました(ドナルドさんご本人が出演されてました)。今回マイアミで休暇中だったパットンも、シェフの名前を聞いて休暇を切り上げて帰ってくるとか。ラサールはビリーとリサも招待しました(直前まで知らなかったのにどうやって…?まあいいか)。そしてバンドも呼ばれており…ってなんとfunky Metersじゃないですか!!

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上から順にArt Neville、George Porter Jr.、Terrence Houston、Brian Stoltz…って、キング共演してるし! 曲はHey Pockey A-Way。うーん、数十秒しか映らないのもったいなさすぎる…funky Metersの無駄遣い。。

なので、少し古くてドラマー別の人(Russell Batiste Jr.)だけど、フルで演奏してるライブ映像貼っときます。

youtu.be

ちなみにfunky Metersとは、1960年代に結成されたニューオリンズの最強ファンクバンドMeters(ミーターズ)が一部メンバーチェンジを経て1990年前後にできたバンドです。日本にも何度か来ています。ちなみにオリジナルのMetersは2018年にGrammy's Lifetime Achievement Awardを授賞しました。授賞セレモニーには、オルガンのアーティ兄さんことArt Nevilleは体調不良のため出席できず、息子のイアンくんと甥のアイヴァン(敬称略)が出ていましたが、このエピソード収録時は撮影できるくらいのお元気はあったのですね。長らく体調不良が心配されており、ご高齢でもあるので最近は全然表に出られていませんが、今も少しでもお元気でお過ごしだといいなと思います。

しかしなー。自分のバーのプライベートパーティに地元の名シェフと世界規模で有名なミュージシャンたちを(しかも結構なショートノーティスで)呼び出せるキングって何者なんだ…。