Ben Ellman & Stanton Moore interview @ WWOZ

ニューオリンズ現地時間で2018/12/20木曜の朝8時頃から、WWOZの番組"The Morning Set With Scott Bourne"に、Galacticのベン・エルマン(Ben Ellman)さんとスタントン先生ことStanton Mooreが出演しました。スタントン先生は言うまでもなくドラマーさんで、エルマンさんはあれです、サックスやハーモニカ担当されてるスキンヘッドの強面な感じの方です。

Galacticといえばつい先日Tipitina’sを買収したことが結構なニュースになりましたが、今回インタビューの目玉はもちろんその話(あと、来年2月リリース予定の新譜の話も)。

内容すべての書き起こしや完全訳は(時間的にも能力的にも)無理ですが、個人的にすごく興味深い話だったので内容まとめてみました。聞き取りミスとかあったらごめんなさい(多分ちょこちょこやらかしてる)。2週間以内ならアーカイブで聴けるので、ちゃんと詳細を知りたい方はそちらをチェックしてください。

 

まずはお2人の登場にパーソナリティのスコットさん、「このインタビュー待ってた人多いよね~、ていうか僕が待ってた!」と楽しそう。しかしミュージシャンといえば夜のお仕事が多く「今までこんな早い時間に出演したことないよね。大丈夫?早すぎない?」と気にしてました。でも2人ともお子さんがいるし、その時間は起きてていつも家でWWOZ聴いてるよ!だから大丈夫だよ!!と。そういえばスタントン先生は他のインタビューでも、どんなに夜が遅くなっても翌朝は起きて娘さんのお弁当作って学校に送ってると話してたな。ていうかSNSやるようになって気づいたんだけど、ニューオリンズのミュージシャンわりと早起きな人が多い。ポーターさんとか、朝早くに前夜のライブ写真をマメにインスタに上げたりしてるし。まあ彼はお爺ちゃんだから目が覚めちゃうのかもだけど…全体的に、皆さんいつ寝てるのか謎です。

ちなみに前夜はまさに件のTipitina'sでProfessor Longhairの100歳生誕祭があり2人も参加されてたとのこと、あまりに素晴らしいイベントでスタントン先生楽しすぎて終わってからも興奮してずっと残って喋りまくってたみたいです(だから今日ちょっと声枯れ気味で…と言ってたけどいつもこんな声だよね)。そんなこともあり、スコットさんは念のため朝7時半前に携帯メールを送ったところ、スタントン先生はちゃんと起きてて「今パンツ履いたとこ!」だったようです。その情報要るのか。まあ正確にはズボンですね多分。I’m putting my pants on!と言ってたんですが、日本人的にパンツと言えばパンツなので一瞬パンツを想像してしまい微妙な気持ちになりました。

 

そしてTipitina's買収ニュース、私も当時色々チェックしてて地元の人たち(ミュージシャン含め)が好意的に受け止めてるな〜という印象ではあったのですが、実際かなり良いニュースだったみたいです。スコットさんは、どっからどう見てもいいニュースで、局と音楽コミュニティを代表しておめでとう、そしてとても感謝していると言ってました。

スタントン先生も、SNSを通じて、あるいは直接連絡をくれて良い反応がたくさんあったのは本当に嬉しいし自分たちにとってもすごく意味のあることだ。発表のあった翌日は、道を歩いていたら窓を開けて「Thank you!」と声をかけてくれた人たちもいたとか。すごいな。

自分たちもとにかく嬉しいし素晴らしいことだと思っているし、まだ現実じゃないみたいな気持ちもあるけど、Tipitina'sはカルチャーアイコンでありランドマークであり、自分たちや他のみんなにとっても重要な場所。そこを「所有者(Owner)」というよりも「世話人(Caretaker)、執務役(steward)」としてTipitina'sをお世話(look after)していくつもりでいる(エルマンさんは「誰もここを所有なんてできないよね(No one can own this place!)」と言ってました)。その決断に対して好意的な反応をこんなに貰えて後押ししてくれるのは本当に嬉しいと。

 

今まではミュージシャンとしてTipitina’sに関わり、またサポートしてきたわけだけど、これからは新たな役割ができたよねとスコットさんが言うと、エルマンさんは比較的冷静(渋い低音ヴォイスゆえそう感じたのかもしれませんが)に、今はまさに蜜月期間だけど、失敗はできないという責任も感じている。ピザ屋を買うのとは訳が違うし、ちゃんと生き残って地元の人たちやミュージシャンたちに貢献していかねばと思ってるよと答えてました。

 

で、ここでそれぞれTipitina'sにまつわる思い出話をひとしきり。

エルマンさんは87年からキッチンで働き、その後照明スタッフやバーテンダーなど色々経験したんだとか(駆け出しミュージシャンたちは「みんな最初はもぎりや警備など、(ライブハウスで)色んな仕事をする」と言ってました。そういえばクリアリーさんはMaple Leafに住み込みでペンキ塗りのバイトしてましたっけ)。

特に印象に残ってるのはFela Kutiのバンドの料理担当をしたことと、George ClintonP-Funk)のスポットライト係で汗だくで4時間ひたすら彼にライトを当てていたことだそう(当時はきかいじゃなく、ステージ上から手動で操作してたらしい)。あとRage Against The Machineの照明係もやる予定だったのが、メンバーが銃を所持してて逮捕されたためキャンセルになったとか…。80年代後半〜90年代前半は今とブッキング担当が違ってて、アフリカのバンドを多く呼んだりとバラエティに富んでいたそうです。

あと皆さん、若い頃は何とか年齢ごまかしてTipitina’sに入ろうと頑張ってたみたいですね(お酒を提供するので夜は21歳未満は入場不可。チェック緩いお店も多いけど、Tipitina’sは私が行った時は結構しっかり確認してました)。

 

スタントン先生は地元民なので、日曜昼間の若いミュージシャン向けのワークショップに通ったのが始まりだそう。ここでジョニー・ヴィダコヴィッチ(Johnny Vidacovich)さんと出会います(この頃の話は前述の娘さん云々話していた別インタビューでも熱く語ってました)。ヴィダコヴィッチさんは当時Tipitina'sでトリオで演奏しつつ(今もMaple Leafでやってるやつかな)、そこにデビュー前の若いミュージシャンをシットインさせていたそうです。それが今のNicholas PaytonやJason & Delfeayo Marsalis、Brian Bladeなどっていうんだから、おそるべしニューオリンズ。そしてもう一つの印象深い思い出は、Bad Brainsのライブを最前列で観てたら背後からダイブされたことだとか。

ヴィダコヴィッチさんからBad Brainsまで、Tipitina’sはジャンルとか関係なく、ただただ素敵な音楽を提供してくれる場所で、自分はここで素晴らしい経験をたくさんさせてもらった。だから今後も、ミュージシャンやお客さんなど関わる全ての人たちが、思わず顔を見合わせて「まじかー!」ってなるような凄い経験ができる場所であり続けて欲しいと言ってました(ちょっと意訳)。

 

経営はどんな感じでやってくの?という質問に対しては、エルマンさんは自分たちはバーの経営に詳しいわけじゃないから、直接できることはコネクションを広げたり、あとは色んな会場でミュージシャンとして演奏してきた経験から、それらの会場で良いと思ったことをTipitina’sの運営に採り入れたりするくらいかな〜と。スタントン先生も、僕たちがあれこれ言うつもりはなくて、基本は「委任(delegate)」して任せたい。今あるものをそのまま続けていく感じで。ただ必要なリソースはなるべく提供したいしスタッフの待遇も良くしたいと。お2人とも今のスタッフにはとても満足しているようで、家族みたいなものだしそのように接していきたいと話してました。

 

あと、スタントン先生は買収が決まって初のTipitina'sステージが先日のDragon Smoke公演だったんだけど(ちなみにベースのRobert MercurioもGalacticのメンバーです)、ステージに立った時にお客さんから溢れんばかりの愛を感じて感激だったそうです。Galacticとしての初ステージは大晦日、間違いなく楽しいライブになるよ!とのこと。

関係ないけどDragon Smoke日本に来ませんかね。実は大好きでライブ盤めっちゃ愛聴してて、うち1枚はなぜかサイン入りなんですけど(Louisiana Music Factoryでシレっと売られてた。売れ残ったのか…?)、まだライヴ観たことないんだよなー。コンスタントに活動してるわけでもなく、ツアーも多いのでなかなかタイミングが合わないのです。フジロックとか朝霧あたりで呼んでいただいて東京で単独公演とかどうですか(観たいとか言いつつフェスに行く気はないという)。Galacticの2名にアイヴァン(敬称略)にEric Lindellて、そこそこ集客力あると思うんだけどダメですか。

 

そして最後、そもそもなんでこういう話(=買収すること)になったの?という質問に対しては、「いい質問だね~(ドヤ」。実はバンドの中では10年くらい前から「Tipitina'sいいよねー欲しいよねー」みたいな話は冗談でしていたんだとか。もちろんあくまで冗談で、あそこはホームみたいなもんだから欲しいよね〜くらいのノリで。それがGalacticがとあるフェス(名前聞き取れなかった)を企画した際に前オーナーのローランドさんと知り合い、少しずつ関係を築いてきた。で、2年くらい前にバンドマネージャーのアレックス氏がローランドさんに「Tipitina’s売る気になったらいつでも連絡してね!」と言ったんだそう。最初はメンバーも「まじでそんなこと言ったの?!」て感じだったんだけど、次第に現実味を帯びてきて、結果的に7ヵ月ほどかけて少しずつ交渉を重ねて話をまとめたんだそうです。話が出てきて2年、具体的な交渉に7ヵ月と時間をかけて進めた話であり、決してある日突然「おっしゃ買うぞ!」となったわけではないよ、とのことでした。なんと、マネージャー謎のナイスアシスト…。でももしかしてメンバーは冗談のつもりと言ってたけど、マネージャーには案外本気に見えてたのかな〜という気もします。ある意味、超有能なマネージャーなんじゃないでしょうか。知らんけど。

 

以上、20分近くかけてTipitina’s買収ストーリーをたっぷり語ってくれました。その後続けて新譜の話もしてたけどそっちは省略。

どういう経緯でこの話が実現したのか、そして何より買ったはいいけど今後どういう展望を持っているのか、などなど気になってたのでとても面白かったです。何より、これだけニューオリンズやTipitina’sを愛する人たちが買ってくれて、地元民も大歓迎していると知ってすごく嬉しくなりました。スタッフの待遇とかも、自分が実際に働いていたということで期待できそうだし。この辺は街全体が色々問題を抱えてそうなので、これを機にニューオリンズ音楽関係者にうまくお金が回るようになるといいなぁ。あとあまり直接経営にタッチする感じではなさそうだけど、せっかく地元バンドが経営するライブハウスなので、そういうカラーが出てきても面白いかなとは思います。

 

なんにせよ、これから色々と楽しみですね。Tipitina’sまた行かないと!