Down By Law

邦題「ダウン・バイ・ロー」。1986年アメリカ公開のドラマ…というか、なんだろ。コメディ??  いや違うか。以下、ネタバレあり。

ダウン・バイ・ロー [Blu-ray]

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ニューオーリンズで暮らす落ち目のDJザックは、ある男から車を預かるが、それが原因となり無実の罪で逮捕される。刑務所の同じ房にいるジャックというチンピラとは、全くウマが合わない。しかし後から収監された陽気でやかましいイタリア人、ロベルトが脱獄を提案。ザック、ジャック、ロベルトの3人は脱走にあっさり成功するが、道に迷ってしまい、延々と続く沼地を放浪するはめになる。やがて、一行は道沿いに立つカフェに行きあたり、ロベルトは女主人のニコレッタと意気投合するが…。(Wikipediaより引用)

 

1986年だったらカラーで映画が撮れる時代なのにあえてのモノクロ作品。それだけで「しゃらくせー」と思ってしまう程度には野暮なんですが、ニューオリンズが舞台、しかもトム・ウェイツさん主演ということで観てみたら、なんかよく解らないけど期待と違う方向で面白かったです。

あらすじは上記引用そのままで、その後ロベルトとニコレッタは残って一緒に暮らし、ザックとジャックは少し歩いて分かれ道の所でそれぞれ違う道へ行く、それだけです。真面目に突っ込んだら負けなんじゃないかってくらいツッコミどころ満載なストーリーなのに、すべてをまるっと無視して淡々と進んでいく。いやいや逮捕っていうけどどう見ても冤罪なのにちゃんと捜査とか裁判とかしたの?はまあ、まだいい(人権的には良くないんだろうけどストーリー的には本質部分じゃないので)。でも刑務所だか拘置所だかで喫煙OKなのにびっくりだし、ロベルトいつの間にか英語上達してるし、簡単に脱走できすぎだし誰も追いかけてこないし、いきなり囚人服の男が3人も現れたのにニコレッタが怪しみも怖がりもしないし、「え、ちょっと待って」の連続。一周回って面白いというか、観ているうちにだんだん楽しい気分になってきます(そういう鑑賞の仕方が正しいのかは不明ですが)。きわめつけはエンドロールのキャスティングでロベルトとニコレッタ演じる役者さんが本名もロベルトとニコレッタだと判明し、「適当すぎるだろ!」と。更にお2人は後日、本当に結婚されたというオチまでついているそうです。最高じゃないですか。

 

殺人や売春が扱われてるけど捜査も謎解きもなし、プリズンブレイクもの(一応)だけど緊張感あふれる逃走劇もなし、男3人のロードムービーと言えなくもないけどバディやブロマンスのかけらもなし、と説明するのが難しい謎映画ですが、どこか憎めずしみじみと面白い映画でした。

場所もニューオリンズである必然性はまったくありませんが、街の様子やバイユーがたくさん映るのは趣深くて素敵だし(「しゃらくせー」とか言いつつ、モノクロ画面は味があって良かった)、トム・ウェイツさん演じるザックがWWOZに言及したり、ロベルトとニコレッタがIrma ThomasのIt’s Rainingでダンスを踊ったりとご当地ネタも少しあり。トム・ウェイツさんご本人の提供楽曲も素敵です。是非おすすめ!とまでは言いませんが、この年末年始は暇だから映画でも観ようかなーという方は、候補に入れてもいいんじゃないかと思います。私も今後、何年かに1回くらいまた観たくなるような気がします。