Art Neville、引退を表明

Neville Brothersの長男、アーティ兄さんことArt Nevilleが正式に引退を表明されたようです。

New Orleans Advocateの、おなじみKeith Speraさんの記事:

Billboardからも記事が出てました:

どちらの記事にも、先日(12/17)に81歳のお誕生日を迎えたばかりのアーティ兄さんが正式に引退を表明した、というお知らせと、彼の過去の業績について書かれています。言うまでもなくKeithさんの記事の方が圧倒的に充実してます。さすが。

 

追記:忘れちゃいけないOffBeat Magazineの記事も。来年あたり本誌で特集組んでくれないかなー。

 

ちなみにKeith Speraさんとは、かつてはTimes Picayune(nola.com)、現在はNew Orleans Advocate所属のライターさんで、ローカルの音楽記事を中心に書かれているのですが、この方の記事からあふれる愛と情報量には、個人的に絶大な信頼を寄せています。特に追悼記事には何度泣かされたことか…。

音楽やミュージシャンに関する記事や文章って、知識マウンティング臭がするものとか気恥ずかしいポエムっぽいものとかもちょくちょくあるんですが(まあ私の文章だって人様にどういう印象与えてるか解らないので偉そうなこと言えませんけど)、この人の文章からはそういうのは一切感じられず、淡々と書かれてるのに音楽やミュージシャンへの愛にあふれている。といっても母国語じゃないので行間のニュアンスまで理解できてる自信はありませんが、彼の記事にはそれを補って余りある魅力があります。私にとってはニューオリンズ関係の書き手さんの中では(日本語のものも含めて)一番好きかつ信頼できるお方です。

 

それはともかく、ここしばらくは公の場に姿を現していなかったアーティ兄さん。GrammyのLifetime Achievement Award授賞式の際も欠席されていたし、年齢を考えても体調はかなりお悪いんだろうと思っていました。

そしてちょうど先日のお誕生日の際は、instagramで偶然こんな映像も発見して(別にネヴィルのネトストしてるわけじゃないよ! なぜか見つけちゃうんだよ!)

シリルさまたちがアーティ兄さんのお誕生日をお祝いしている映像がちらっと映ってるのですが、アーティ兄さんはベッドに寝てらっしゃるんですよね。オイスターは召し上がったみたいだし、寝たきりってわけでもないんだろうけど、もう人前で演奏したりするのは厳しそうだというのは伝わったので、今回のニュースはとても残念ではあるけど冷静な気持ちで受け止めています。

 

むしろよく考えたらここ10年あまり、アーティ兄さんは体調不良の噂も多く、大抵は歩くのも辛そうでした。Neville Brothersで来日された2008年の時点で既に杖をついて足元おぼつかない感じで、だからこそ2010年のジャズフェスでBig Chiefを演奏しながら自力で立ち上がられた際には「アートが立った!」とハイジばりに感動したわけですし。2014年のfunky Metersの公演ではイアンくんに支えられながらステージを移動されており、こんな状態でよくぞ来てくださった…と思ったのを覚えています。ほんと、そうなんです。長い間決して体調は良くなかったはずなのに、精力的にツアーを続けてずっとステージに立ってくださってた。どちらかというとその印象が強いので、「お疲れさまでした、ありがとうございます」と頭が下がる思いです。残りの人生は大好きな家族に囲まれて、素敵な音楽聴いて美味しいもの食べてStar Trekでも観つつ、のんびり幸せに過ごしてください。

 

ミュージシャンて定年ないから「生きてる限りステージに立ち続ける」ことを何となく期待されてるとこがあるけど、彼らにとっては「仕事」なわけで、81歳って普通ならとっくに引退してる年齢です。いくら好きなことでも仕事となれば責任も伴うし、限界は感じて当然。最近は引退宣言をしてお別れツアーなどする方も増えているけど、ファンにとっても(残念とはいえ)区切りもつくし、「あの時観ておけばよかった…」的な後悔を少しでも減らすためにも、引退宣言は寂しいけれどありがたいなと思います。

 

しかしそうなると、以前「チャールズ兄さん生前にNeville Brothers最後のレコーディングがされたらしい」と書いたけど(これ)、アーティ兄さんにとっても最後のレコーディングになった可能性もありますね。まだリリースのお知らせなどは出ていませんが、とりあえずはおとなしく待ちましょう。

 

繰り返しになりますが、アーティ兄さん長い間お疲れさまでした。

たくさんの素敵な音楽を届けてくれてありがとうございます。私の音楽人生にとっても、本当に大切な存在です。

幸せな余生をお過ごしくださいね。