NCIS: ニューオーリンズ (S1E2)

Carrier / 黒い思惑

クラブに出かけたジェロニモの乗組員コリアー大尉がタクシーにはねられて死亡する。死ぬ前の様子が変だったという証言を受け婚約者に話を聞くが、コリアーがドラッグをやっていたとは考えられず、上官であるベイツ中佐にも思い当たることがない。検視ではコリアーが風邪薬を服用していたことしか分からなかったが......。(スーパー!ドラマTVサイトより引用)

 
いきなりのバイオテロで窮地に陥るニューオリンズですが、これは番組の早い段階で「2005年の災害(ハリケーン・カトリナ)」について言及したかったからでしょうかね。そして、トニーの出演にアビーとヴァンス局長のビデオ参加。まだまだ本家の助けをが必要な時期だったなぁという印象です。

なお、ハリケーン・カトリナ(Katrina)とは、2005年8月下旬にメキシコ湾周辺を襲った大型ハリケーンニューオリンズを直撃したのは8月29日で、市のほとんどが被災したため1500名近くが亡くなり、生き残った住民も8〜9割が避難生活を余儀なくされたそうです。ニューオリンズはほとんどのエリアが海抜より低く、川沿いに堤防がたくさんあるのですが、それらが決壊してしまったのです。その後戻って来た人もいれば、戻れなかった人や戻らなかった人、新たにやって来た人などもいて、Katrina前後で人口構成も変わったと聞いています。有り体に言えば低所得の黒人人口が減ってしまった(いわゆるgentrificationですね。今も地元メディアなどで折に触れて問題提起されています)。彼らがかつて住んでいたエリアは十数年経った今も放置されている所があり、一方で復興で景気が良くなったためか、かなり値上がりした土地もあります(確かにニューオリンズの家賃は結構高い)。Katrinaは当時日本でもそれなりに大きなニュースになり、ドキュメンタリーなども放送されていましたが、遠い外国の話だし、その後も国内外で大きな災害が起こり続けているためほぼ忘れられているでしょう。とはいえニューオリンズの人たちにとって今もKatrinaの影響は決して少なくありません。

 

さて、話を戻して、冒頭で演奏していたのは2012年にグラミー賞も受賞しているRebirth Brass Band。何度かメンバーチェンジを経ていますが結成35年あまりのニューオリンズブラスバンドで、日本にも何度か来ています。中盤ではセバスチャンが「人生の拠り所にしているのは、毎週火曜にMaple LeafでやってるRebirth (Brass Band)のライブ」とも言ってました(ヨガをしていたシーン)。Maple Leaf BarニューオリンズのUptownにある人気ライブバーですが、これを書いてる2018年7月の時点でもRebirth Brass Bandは火曜レギュラーでやってるようです。というか、ツアーにでているはずの時期にもRebirth名義で出演しており、もはや誰が正式メンバーなのかよく解らない状態です。。

なお、番組内のライブ映像はMaple Leafではなく、事故現場も(Uptownではなく)フレンチクオーター内、Bourbon StreetとOrleans Streetの角あたりです。

f:id:crescentagency:20180712150129j:plain(ちょうどこの辺で現場検証してました。狭くて昼夜問わず人通りも多いのに、人が死ぬようなスピードでタクシー走れるのか?という気もしますが、そこはまあドラマなので…)

 

オープニング後、ブロディがオフィス読んでいた本はこちら(エンディングのBBQで読んでいたのも同じ)。

Beautiful Crescent: A History of New Orleans

Beautiful Crescent: A History of New Orleans

 

表紙の写真が美しい。
キングとラサールが「本からは知れないこと」として話していたChicken Fried Cornelius Raymond(Dauphine StreetとConti Streetの角でいつも演奏していたストリートミュージシャンで、馬車に蹴られて地面に歯が埋まった人)については、調べたものの不明。でも全くの作り話とも思えないので、もとになる実話があるんじゃないかな…。

そしてStreetcar 952、これはテネシー・ウィリアムズの「欲望という名の列車」に出てきたストリートカーのことです。かつて952番車両はDesire Line(Desire Streetを通るストリートカーの路線)を運行していたのですが、その出発点がまさにこの場所(NCISNOLAオフィス)だった、と。オフィス(のロケ地)はフレンチクオーター内、St. Ann Street沿いにあるのですが、Desire Lineのルートを調べる限りここが出発点てのはさすがに作り話でしょう。ただ、ルートには含まれていても不思議はなさそう。この辺とかこの辺とか参考にして軽く調べた程度ですが。
なお、これと同じタイプの緑の車体は、今はSt.Charles Avenue沿いを走っています。パイロット前編では、「キングとラサールが初めて会った場所」でラサールの背後を走ってしました。

 

さて、謎の多いコリアー大尉の遺体を前に頭を抱えるロレッタ。キングに暗に(モルグから)出て行け、との意思表示として、字幕で「アイス」となっていたのは、実際にはSno-ballというニューオリンズのお菓子で、むしろカキ氷に近いです。蒸し暑い時期が長いので、アイスよりさっぱりしたカキ氷のようなものが好まれるのかも。ドラマではマンゴーとチョコ味どっちがいい?と言ってたけど、チョコ味のシロップってどうなんだろう…フラペチーノ的な感じ??(私はベリー系くらいしか食べたことない)

モルグのシーンといえば、ペスト菌が見つかった時にロレッタとセバスチャンがDr. Wade、Mr. Lundと呼び合ってたのはなんか新鮮でした。いまや母子みたいな関係だけど当時はまだ少しよそよそしかったのか、それとも緊迫した場面だったのでプロっぽく振舞ったのか。。
私が中学生で英語を習い始めたばかりの頃、「アメリカ人はフランクだから職場でも何でもみんなファーストネームで呼び合う」みたいなことを聞いていたのですが、ドラマを観たり本を読んだりするうちに、全然そんなことないですよね。キャッスルやボーンズなんて、夫婦でも基本苗字で呼んでるしね。呼び名から関係性を観察するのも面白いです。

プライドが追い出された後は、ブロディとラサールの聞き込みシーン。場所はPort of New Orleans。Portといっても海ではなく、ミシシッピ川に架かる橋のふもとあたりにあります(ニューオリンズはよく港町だと誤解されるのですが街の中心部は海に面しておらず、メキシコ湾岸なのは東の方の一部だけなのです)。Portの近くに移民の記念碑(Monument to the Immigrant)があるというブロディですが、実際は同じ川沿いとはいえ少し離れたところ(フレンチクオーターすぐ近く)にあるみたい。しかしブロディ勉強家だなぁ。

 

さて、ペストの感染拡大を防ぐためキングたちは市内に散らばった乗組員探しに奔走するわけですが、バイユーで違法ギャンブルをしていたDigg、遊びならダウンタウンのカジノでやれと言われてしまう。これはおそらくHarrah'sのことでしょう。街の中心にある目立つ建物なので、ここもロケ地に何度か使われています。

結局Diggにも感染が発覚、原因を調べるためにもジェロニモの内部を調べねば!ということで意気込むキング。

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キャビネットにはWWOZのステッカーが!
WWOZはニューオリンズ音楽を中心に放送している地元のラジオ局ですが、ネットで世界中から聴くことができます(局専用アプリもあるし、TuneInなどからも聴けます)。ジャズフェスなど各種ライブの中継もあり、最近は原則2週間はアーカイブも残してくれるので、昔ほど時差を気にせず楽しめるようになりました。WWOZを聴いてOffbeatを読んでいれば、ニューオリンズの音楽シーンはかなりキャッチアップできるんじゃないでしょうか。

その後トニーの協力もあり、マフィンに菌が仕込まれたことが判明、料理担当のWarrenが疑われますが、彼が滞在していたCafe Reconcileは実在するようですね。NPO団体が、平日のランチタイムだけカフェをオープンしているようで、撮影も実物の場所で行われています。
とはいえ限りなく怪しく見えたWarrenは結局無実、逆に一見いい人なハフカット医師が、ワクチンで一儲けしようして仕込んでいたというオチでした。愛するニューオリンズバイオテロの危険にさらし、カトリナを思い出させ苦しめられたキング、逮捕時には殺しかねない感じでしたね…。あんまり覚えてなかったけど、最初の頃は結構荒っぽいキャラだったんだなぁ。