NCIS: ニューオーリンズ (S5E4)

遺産 / Legacy

海で見つかった遺体が海軍調査事務所の兵曹と分かり、NCISが捜査することになる。遺体の状況から海に投げ出される前に死亡し、のちに漁船のプロペラで切断されてしまったことが推測される。亡くなった兵曹はベトナム人の漁師コミュニティで育った青年で、いとこの少女と親しくしていた事が分かるが、その少女、エイミーはある船を爆破しようとしていたことが判明する。(スーパー!ドラマTVサイトより引用)

 

ニューオリンズベトナム人コミュニティでの事件でした。

ニューオリンズはそんなにアジア人が多い都市ではないのですが、その中でも一番多いのはおそらくベトナム系の人たちです。フランス領つながりか、ベトナム戦争絡みか?と長年何となく疑問だったのでこれを機に少し調べてみたところ、どうやら1975年のサイゴン陥落後に多く移住してきたらしいので、一応後者が正解かな。なぜニューオリンズかというと母国と気候が似ていたから(要するに高温多湿)、あと移住した人たちの多くがカトリック教徒で、彼らの移住を手配したカトリックの支援団体がニューオリンズを選んだからだそう(そこでなぜニューオリンズを選んだのかまでは不明)。彼らの多くはNew Orleans East(Industrial Canalという運河より東、メキシコ湾までの一帯)とWest Bank(フレンチクオーターからミシシッピ川を挟んだ反対側)に定住し、今もこのエリアにベトナム人コミュニティがあります。主な生業は本エピソードにも出てきた漁業と、あと市内に結構ベトナム料理店があるので飲食業でしょうか(ニューオリンズベトナム料理美味しいとは聞くんですが、日本でも食べれるしなぁ…とつい思っちゃってまだ一度も行ったことないです。ベトナム料理大好きなんですけどね)。そういえばポーボーイとバインミーのパンはどちらもフランスルーツで似てるのか、ポーボーイ店にパンを下ろしてるベトナム人パン工場?をドキュメンタリーで見たこともあります。

なお、今回のエピソードの舞台の正確なロケ地は不明ですが、空撮の風景や、捜査のシーン出てきた地図などから、おそらくNew Orleans Eastではないかと思います。

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ちなみに504で始まる電話番号、こちらはニューオリンズの市外局番ですが、地元ではfive-zero-fourではなくfive-o-fourと発音し、"504"というそのままのタイトルの歌もあったりします(ライブでめちゃくちゃ盛り上がる)。

 

と、前置きが長くなりましたが今回の被害者アーロン・トラン兵曹はそんなベトナム人コミュニティから入隊した海軍兵、カトリーナで両親を亡くして叔父の漁業を継ぐ予定が入隊したため疎遠になっていたけど、従兄弟である叔父の娘エイミーとは連絡を取っていたようです。

エイミーはアーロンの死の直前にも連絡を取っていました。ただでさえ家業が大変で生活が苦しいところを、テキサスの大手企業トライトン(Triton Fisheries)が毒を撒いて業務妨害しているとの噂があり、彼らの不法行為の証拠を手に入れたと思しきアーロンがトライトン社に殺されたのでは?と。

しかしトライトン社の人物に話を聞いても、アーロンの叔父の会社の買収は断られたが毒なんて撒いてない、むしろ勘違いして逆上した彼らに船を爆破されそうになったりして自分たちは被害者だと言います。事実、アーロンが勤め先の研究所に水質検査を依頼した記録がありましたが毒は検出されませんでした。

ちなみにアーロンが検査を依頼したのは勤め先でもあるOffice of Naval Researchで、実際にはアーリントンにあるみたいです。ロゴも実物(下記2枚目)と微妙に似せてます。

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で、ご当地ネタが特にないので端折ると犯人はアーロンやエミリーと幼馴染みのエディ、毒を撒いていたのも彼でした。自分の家のエビ加工工場を乗っ取って自ら企業するために工事に毒を混入させて営業妨害、それに気づき咎めたアーロンが殺されたという展開でした。エディの犯行に気がつき復讐で殺そうとするエミリーをハンナが説得して捜査に協力させて逮捕。

 

そしてサイドストーリーは前シーズンからの課題、ラサール父の会社の脱税疑惑。序盤で国税局から結果報告を受けたビル、ここも既に何度も登場してますがF. Edward Hubert Buildingという連邦政府の建物で、実際には郵便局など入ってます。

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カレン・イッゾ検事の勤務地もおそらくここなはず。過去にキングもここで取り調べを受けたりと、あまり良いご縁のない場所ですね。ちなみに市庁舎ロケ地のGallier HallとはLafayette Square挟んで隣です。

 

キングが職権濫用(通常運転)で色んな資料を取り寄せて、パットンやレイラ(ラサール父の会社の元経理担当者)の協力も得て捜査したところ、ラサールの父親はかなりのお金をケイマン諸島の口座に流していたのですが、私利私欲のためではなく、お金が必要な社員にそこから払ってあげていたのでした。とはいえ脱税は脱税。支払い義務はあるので、ラサールは会社を解散することにしました。レイラには「貴方が受け継ぐべき資産なのに」と言われてたけど、もともと継ぐ気はなかったしむしろスッキリしたんじゃないでしょうか。しかも父親は口を開けば自分の仕事にさんざんケチつけていたけど、実は「人助けをしている」と周囲には誇らしげに話していたと知ってちょっと嬉しそうでした。

…となんだか美談ぽくなってたけど、うーん、いくら人道的な目的とはいえ一部の社員へ金銭的な便宜を図るために違法行為(=脱税)を繰り返し、結局それが原因で会社が潰れちゃったら社員はみんな仕事を失くすわけで、それって経営者としてどうなの?という気はします。

ちなみにレイラの息子が通っていた学校はここ。

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実際にはSt Charles Ave沿いにあるAcademy of The Sacred Heartという女子校なようです。日本の聖心女子学院と関係あるのかな…?とざっと調べてみたところ出てきたこんな記事。

www.jash316.com

聖心会というフランスで設立された修道会のシスター、フィリピン・デュシェーンが約200年前に渡米し最初にたどり着いたのがニューオリンズで、ここに創立した学校だったんですね。日本の聖心女子学院も同じ聖心会系列なようです。

ちなみに上記記事で、フィリピンさんがニューオリンズウルスラ修道会(Ursuline Sisters)に滞在したとありますが、そういえば市内にUrsuline Avenueってありますね。

 

それにしても登場わずか3話目だというのに、ハンナさんの安定感がすごい。反抗的で思いつめたエミリーへの接し方なんてもう、大先輩ロレッタも顔負けじゃないでしょうか。キングが事務仕事に耐えられるとは思えないのでそのうちNOLAチームに戻るのでしょうが、普段は彼女のような上司のもとで仕事して、キングとは少し距離を取りつついざという時に相談したり助けを求めたりする(今回ラサールのことが心配で訪ねたグレゴリオのように)、という感じが現実的にはいちばん仕事がしやすいんじゃないかという気がします。というか私だったらそうしたい。まあ、ストーリー的には暴走上司が恋しくなってくるのかもしれませんが。

しかしハンナさんとても素敵だし今後の活躍も楽しみだけど、このままだとセバスチャンのお守り役も最近もっぱらグレゴリオだし、ロレッタの立ち位置が難しくなるのではと少し心配になってきます。ロレッタ先生はむしろこれを機に、よりニューオリンズの人っぽいアクの強いキャラになってくれてもいいんじゃないかな。今までも頭の良さと肝の座った強さなどは何度か垣間見れたけど、アクションシーンとは言わないまでも「強いロレッタ先生」をもっと観てみたいです。