NCIS: ニューオーリンズ (S1E15)

Le Carnaval de la Mort / 狙われたマルディグラ

マルディグラ前の日曜の夜、トゥーサン・パトリース兵曹が腹と胸を刺されて死亡する。犯人は道化のマスクをしていたという目撃情報をもとに、トゥーサンの手にスタンプが押してあったクラブに行くと皆が道化のマスクをつけていた。一方、ブライトの娘ローレルが刑務所にいる祖父のカシアスを訪ねていたことが分かり……。(スーパー!ドラマTVサイトより引用) 

 

マルディグラエピソード、かつキングの父カシアスも初登場と色々盛りだくさんでした。


Mardi Gras(フランス語で太った火曜日(Fat Tuesdsay)の意味)は、リオデジャネイロヴェネツィアのカーニバルと並ぶ世界でも有名なカーニバルの一つですが、これらはもともとキリスト教に由来する行事です。すごい雑にいうと、翌日から四旬節(レント)という、イエス・キリストの受難に思いを馳せて食事制限など禁欲的な生活を行う時期が続くので、今のうちに飲んで食べ(て騒ぎ?)ましょう、的な趣旨です。ちなみに、四旬節が明けるとイースター(復活祭)です。

 

オープニングで演奏していたのはKermit Ruffins & the Barbecue Swingers。

f:id:crescentagency:20180826161826j:plain

左側のトランペッターがKermit、地元では大変に有名なミュージシャンで、市内でライブバーなども経営しています(私は行ったことないけど、運が良ければ彼自身の手料理をご馳走になれるという噂も)。ちなみに右側でキーボード弾いてる男性、なんと日本人です! Tsuji Yoshitakaさんという方で、長らくBarbecue Swingers始めニューオリンズでご活躍されています。NCISシリーズに遂に日本人デビュー。嬉しいですねぇ。Magazine St上で撮影されたようです。余談ですが、辻さんは現地で"Z2"と呼ばれているそうです(ツジがひっくり返ってZ2になったと聞いたことが)。私は昔Kermit Ruffinsのライブを観に行った際にアジア人がキーボードなので気になっていたのですが、メンバー紹介では"On keyboard, Z2!"としか言われなかったので、中国系あたりの人だとしばらく思っておりました…。

 

被害者はトゥーサン・パトリス(Toussaint Patrice)という名前でしたが、これはアラン・トゥーサンAllen Toussaintニューオリンズの伝説的なミュージシャン)を意識してのネーミングなのかな…。

ラサールはマルディグラカラーのシャツを着てズボンからはビーズを下げ、浮かれて出勤しております。大丈夫なのか。

f:id:crescentagency:20180826162950j:plain

マルディグラカラーとは、紫・緑・金の3色で、順に正義(Justice)、信頼(Faith)、力(Power)を意味します。イエス・キリストが生まれた時に訪れた東方の三博士を表しているんだとか。ラサールのシャツもそうですが、金は黄色で代用されることも多いです(ちなみにこのシャツ、マルディグラ前に街を歩いていると着ている人よく見かけます)。オフィスやラボもこの色を基調にしたデコレーションであふれていましたね。一応マルディグラにちなんだ色ですが、それ以外の時期でも「ニューオリンズっぽさ」を出したいときによく使われてる気がします。

ラサールは連日Hurricane(アルコール度はかなり高いが甘くて口当たりが良いので飲みすぎ注意なニューオリンズのカクテル。Bourbon Stなどでよく売られてます)を飲みつつKrewe crawl(Kreweのパーティのハシゴ?)を楽しんでいるようで、Kreweの名前を色々挙げてましたね。Krewe(クルー)もこのエピソードで何度も登場してますが、マルディグラでパレードなどを行う組織のことです。初マルディグラのブロディ、この狂乱ぶりに若干引いてました。

 

トゥーサンの手に押されていたスタンプから、Glitter Ballというクラブにいたことが判明。このクラブ、ラサールと、後のパットンのセリフではビジネス街(Central Business District)のSt Charles Ave沿いにあるかのような感じでしたが、ロケはフレンチクオーター内のLatrobe's on Royalというイベントスペースで行われたようです。前回(S1E14 )裁判所の銃撃の際に犯人が潜んでいた「黄色い建物」の2軒隣なんですが、かなり気をつけて観ないと解らないように撮ってました。ここでのパーティはYemojaというKreweが毎年Bacchus Sunday(マルディグラ2日前の日曜日)に開催しているようです。マルディグラはその名の通り火曜日なのですが、前後の日をBacchus Sunday→Lundi Gras(Fat Mondayの意)→当日Mardi Gras→Ash Wednesdayなどと呼んだりもします。

トゥーサンはこのクラブのVIPルームにいたらしく、血痕やガラスの破片などが見つかります。妻の話では断薬中のはずなのに、なんでこんな誘惑の多い場所にいるのかと。

 

VIPルーム客のリストから怪しい人物(Screwy Douce)が挙がるものの犯行は否定、トゥーサンをVIPルームで見た時には既に血を流しており、手にガスマスクを持っていたと。パットンの捜査で証言の裏が取れ、乗り捨てられたトゥーサンの車からも大量のガスボンベが出てくる。イソフランという医療用の麻酔ガスでAlgiersの倉庫やそのライバル会社からも盗まれたものらしい。

倉庫とトゥーサン殺害現場の防犯カメラ映像からシドという男が挙がります。トゥーサンがボランティアをしていた断薬施設にいたとのこと。しかしプライドたちがシドの家に行くと覚醒剤の過剰摂取で死にかけており、「奴らに(トゥーサンを)殺せと言われた」「マルディグラの日に強盗」などと言い残して亡くなる。シドの前科から仲間を洗い出し、キングの父カシアス(父については後述)のヒントもあって、商工会議所(New Orleans Board of Trade)で行われるパーティがターゲットと判明、無事犯人グループを確保できました。イソフランでお客を眠らせ、その間に宝飾品などを奪う計画だったようです。うーん、雑な犯行…。そしてトゥーサンはシドの挙動を怪しんで跡をつけて、それで殺されちゃったのか、車にガスボンベ積んでたし仲間だったのか、なんかよく解りませんでした。

 

さて、キング父カシアスですが、相当な悪事をやらかして長い間Gretna State Prisonに服役しているようです。ローレルは、キングに内緒で連絡を取って刑務所まで会いに行っていた。キングは、ローレルに貸した車の走行距離が片道20マイルだったことから嘘を見破ってますが、Gretnaにある刑務所(Jefferson Parish Correctional Center)からオフィスからは実は10マイル弱…って、そんなとこねちねち突っ込むのもアレですけど。

キングは、ローレルにはカシアスについて良い話のみ選んで伝えているが、実際には女性問題を始め娘に言えないようなことも色々していた。自宅に送られてきたキングケーキ(字幕では「キンケード」となっていたけど)には指が入ってたことも…って、怖いよ。カシアス何したんだ。。ちなみにキングケーキ(King Cake)はキリスト誕生に由来するお菓子で、世界各地いろんなスタイルがあるようですが、ニューオリンズではマルディグラシーズンに食べられます。円形の大きなペイストリーに紫・緑・黄色の砂糖衣がかかっており、なかなか強烈な外観です。キングも用意していたみたいですね。

f:id:crescentagency:20180826173230j:plain

手前に写っている紫・緑・黄色の物体がKing Cake。

このケーキの中には赤ん坊の小さなフィギュア(誕生したばかりのイエス・キリストを象徴しているらしい)が埋め込まれており、取り分けた時にそのフィギュアが入っていた人がその日のキングorクイーンになれる・次のケーキを用意する・次のパーティのホストをするなどいろんな習慣があるそうです。面白いというかアメリカらしいなーと思ったのが、近年はこのフィギュア、お店で売ってるケーキには埋め込まれておらず、ケーキの外に添えて出されることが多いそうです。うっかりフィギュアを喉に詰まらせたり飲み込んじゃったりして訴えられるのを避けるためとか。

f:id:crescentagency:20180826173450j:plain

上記の写真は私が昔、マルディグラの少し前に行った時にフレンチクオーターのカフェ(Antoine's。多分Annexかな)で食べたもの。フィギュアが入っていたらコーヒー代サービス、とかだったと思います(残念ながら入ってなかった)。

 

このキングケーキ、マルディグラシーズンにはカフェやスーパーなどあちこちで見かけますが、意外とホール単位の販売が多くてスライス売りのお店を探すの苦労した記憶があります。オフシーズンは更に入手困難になりますが(Antoine'sも季節限定だったはず)、Mardi Gras Worldでは季節関係なく見学ツアーにキングケーキのスライスが付いてきます。
ちなみに味はマジパンが入っていて正直個人的にはそんなに好きではありませんでした(見た目ほど甘くはない)。まあ話の種に一度くらい食べてもいいかな、って感じです。

 

と、キングケーキで随分脱線しましたが、結局はキングが折れて、カシアスとローレルの交流は認められたようですね。もっとも、カシアスの仮釈放への口添えはまだしなさそうですが。

カシアスがローレルに話していた「Rex」のキングのエピソードですが、カシアスはかつて、RexのメンバーではないもののRexのキングになるよう頼まれたとのこと。Rexとは市内の富裕層や有力者からなるKreweで、毎年マルディグラにはメンバーから「キング」が選出されます。カシアスはメンバーではないが、例外的にキングに選ばれたとのことです(いわく、「多くのメンバーたちがカシアスとお近づきになりたかった」と)。ちなみに、パイロット前編のラサールの話では、息子(ドウェイン)も麻薬組織を一掃したことでRexの「キング」に選出されたんですよね。WikipediaにはRexのキングに選ばれることは市民にとって最高な栄誉、と書かれます(要出典とあるので真偽は不明ですが)。プライド親子はメンバーでもないのに親子二代でこの名誉ある地位に選ばれたことになります。プライド家というかカシアスというか、一体何者なんでしょうね。キングも一介の公務員ではなさそうです。

 

エンディングでは、ラサールが再びマルディグラカラーのボーダーシャツを着て、他のメンバーもそれっぽく着飾ってパレードを見ていました。ラサールが"Beads!"と叫びながら服をめくり上げたのは、ビーズ欲しさにフロートに向かって服をめくって胸を見せる女性が多いからです(ブロディが冒頭で乳首がどうこう言ってたり、パイロット後編でマクギーが違法じゃないのかと心配してたりというのは、この話です)。中年男性が胸を見せて効果があるのか謎ですが、直後にちゃんとビーズゲットしてたのでよかったですね(笑)。