Rest in Peace, Mr. Henry Butler

ニューオリンズのピアニスト、Henry Butlerさんが癌のため亡くなったそうです。地元メディアにも記事が上がり始めています。

nola.com: Henry Butler, New Orleans R&B and jazz piano virtuoso, dies at 68
WWOZ: In Memoriam: Henry Butler | WWOZ New Orleans 90.7 FM
New Orleans Advocate:Henry Butler, the New Orleans piano powerhouse, has died at age 68 (Keith Speraさんによる追悼記事。やはりこの方の記事、素晴らしい…)
OffBeat Magazine: Pianist Henry Butler Has Passed Away After Cancer Battle

 

癌については1年半ほど前に公表されており(当時ステージ4だった)、ドイツで温熱療法を受けるということで治療費のクラウドファンディングなども行っていましたが、Keithさんの記事によれば最初に癌と診断されたのはもう少し前で、化学療法も試されていたそうです。温熱療法のあと、しばらくしてNYを中心に各地でライブを再開していたし、今年も私が行く前の週ですがジャズフェスに出演されており(Keithさんによればずいぶん痩せてしまってはいたようですが)、乗り越えられたのかと思っていました。7月にもライブを予定していたらしく、最後まで現役だったのですね。68歳は若すぎる…。

Henry Butlerさんは生まれながらに目が見えないのですが、「盲目のピアニスト」的な肩書きはかえって失礼だと思わされるような、ものすごい演奏をされる方でした(初めて生で観たときは、シリルさま目当てだったにもかかわらず、ほとんど彼に持って行かれた)。確かアイヴァン(敬称略)が「Man with six hands」などと言っていましたが、本当に、一人で弾いているとは思えないんだけど、いわゆる「テクニックに走る」ようないやらしい感じは一切なく、またピアノのみならず歌も素晴らしい。さらにステージの外では写真撮影や自動車の運転にも挑戦しており、とてもアクティブな方という印象です。忘れられないのが2010年のジャズフェス。New Orleans Social Clubのステージをお友達が観に来ていたらしく、客席に向かって「Raise your hand, and I can see you, man!」とジョークを飛ばし、横でポーターさん爆笑。こんなジョークをさらっと言っちゃうHenry Butlerさんもなかなかだけど、爆笑できるポーターさんとの信頼関係もすごいなと思ったのをよく覚えています。
内心まではわかりませんが、とにかくいつも明るくてカラッと前向き、そしてバイタリティあふれる方という印象だったので、癌治療もきっと乗り越えて、まだしばらくはステージに立ってくれるだろうと漠然と信じていました。
前述のNew Orleans Social Clubも、4年くらい前だったか、レイモンドが「またやりたいって話はあるんだけど、メンバーのスケジュールがなかなか合わなくてね」と言ってて、まあ不仲で辞めたわけじゃなし、そのうちひょっこりジャズフェスとかに出てくれるかな、なんて思ってたんだけど永久にかなわなくなってしまった。。

 

Allen Toussaint急逝のときになんとなく感じて、チャールズ兄さんの時に確信したんだけど、これから先はこうした悲しいニュースを何度も経験して、時代の移り変わりを少しずつ受け入れていかなければならないんだろうなぁ。

ニューオリンズ風に、苦しみから解放されたであろうHenry Butlerさんを祝福しつつ、御冥福をお祈りしたいと思います。