Jazzfest 2018, After the Fest #3

George French Trio @ Dos Jefes
John Mooneyのバンドでドラムを叩いていたDoug Beloteさん、ドラムセットもドラミングも素晴らしくてすっかり惚れ込んでしまい、滞在中にもう一度ライブがあるということだったので観に行ってきました。George French Trioでドラムを叩かれるとのこと。ええと、George Frenchさんてなぜかギタリストだと思い込んでたのだけどベーシストだったんですね…なんかすみません。

場所はDos JefesというUptownにあるシガーバーです。行く前は「人生最初で最後かもしれないからシガーでも吸ってみるか!」とか少し思ってたんですが、ちょっと疲れぎみで喉が痛かったのとシステムがよく解らなかったのと煙が思った以上に苦手だったのと、あとライブ聴いてるうちにどうでもよくなったのとで結局やめました。

 

ダグさんのドラムはこの日もバス・スネア・ハイハット・シンバル各1のミニマムセット。これで演奏ショボかったら残念なんだけど、ものすごく上手いんだからすごいよなー。ほんと、ドラマーの鑑ですよ。

ダグさんは私のことを覚えてくださっていて、先日私が随分と失礼だったにもかかわらず、休憩時間ににこやかに「来てくれてありがとう」とお声をかけてくださいました。恐縮…。

で、そのまま少しお話したんですが、なぜか気がついたらシリルさまへの愛を一生懸命語ってしまっていた私(なぜそうなる)。そしたらダグさんいわく、「彼(シリルさま)は僕にとって父親のような存在(father figure)だ」と。

…なんと! あんまり接点とかなさそうだったので、ちょっとびっくり。ていうかfather figureて!

 

私は数年前にネヴィルの自伝を読み返して、(シリルさま目線であることを差し引いても)奥様ゲイネルさんの女神のような圧倒的母性に心を打たれたんですね。たとえばシリルさまが過去にやんちゃして知らない女性との間に作った子どもたち(ってそれ「やんちゃ」で済むのか…)も、自分もまだ若いのに我が子として受け入れてくれた、とかそういうエピソードが色々あるんですが、読んでるともう「この圧倒的母性、なんかウルトラの母みたいなお方だ…」と(注:ウルトラの母はタロウ以外の六兄弟とは血縁関係がない。といって、ウルトラの父がよそで作った子どもってわけでもないんですが)。で、ゲイネルさんがウルトラの母ならシリルさまはウルトラの父だな!とか半ば冗談で言ってたんですが、息子世代のミュージシャンに父のように慕われてるって…マジでニューオリンズウルトラの父じゃないの!!と思わず興奮しましたよ。

 

そりゃね、今年のジャズフェス最終日はじめ、ショーティくんと共演されているお姿は何度も拝見しているし、スタントン先生やSoul Rebelsのアルバムなどにも参加してらっしゃるし、Irvin Mayfieldさんをご自身のステージにお呼びになってるし、若い世代と交流がおありなことは解ってましたよ。でも、どうしても「熱き怒れる男」みたいなイメージが拭いきれないというか、実際今でも彼の音楽の原動力のひとつに「怒り」があることはたぶん間違いないと思うんですね(もちろんそれだけじゃないけど)。それにお若い頃は結構怖かったらしいし、「偉大な方だけど近寄りがたい」的な立ち位置なのかなぁ…なんて思っていたのです。
それがfather figureだなんて!! 「怖くて近寄りがたい親父」って解釈もあるかもしれけど、そういうニュアンスではなかったように思えました。私が知る限りシリルさまとダグさんは頻繁に共演しているわけではないので、シリルさまは若手ミュージシャンの方々と、単にステージ上での交流を越えた繋がりもちゃんとおありになるのだなぁと。そして慕われていらっしゃるのだなぁ、と。とても嬉しくなりました(n=1でここまで妄想して盛り上がれる私の想像力もいかがなものかとは思う)。貴重なお話をうかがうことができました。感謝感謝。

そして、チャールズ兄さん亡くなってしまって寂しいですねというお話も少し。滞在中、チャールズ兄さんを追悼するライブはたくさん観ることができたけど、私自身の気持ちを誰かと共有できたわけではなかったので、ようやく言葉にできたのがよかったです。
…しかしなんで人のライブ来てまでネヴィルの話するかね私は。

 

ネヴィルの話ばかりでもあれなのでライブに戻すと、この日はステージというよりお店の片隅に楽器並べてゆるっと演奏してる感じだったんだけど、ある曲を演奏中に客席のおばちゃんが突然歌い始めました。
酔っぱらってご機嫌なのかなーくらいに思ってたら、ジョージさんがその人に向かって「こっち来て歌いなよー」と。そしたらおばちゃん本当に出て行ってバンドを背に歌い始めた(笑)。いいのか?! しかも結構上手い。何者だったんだろうあの人。

その後もお友達のミュージシャン(ドラマーとベーシスト)が2人来たとかで、2曲ほどダグさんとジョージさんに代わってシットイン。その間、ダグさんに「何か楽器とか演奏する? 出てもいいよ」と言われた…いやいやいやいや! 勘弁してください。丁重にお断り申し上げました。ニューオリンズでは色んなライブ観てるけど、ここまで緩いのは初めてだったな。私は楽器演奏するといっても完全なお遊びレベルで人に聞かせたいとか思えないし、むしろ自分がどんなに頑張っても到達し得ないレベルの方たちの音楽を聴いている方が好きなので、向上させたいという気持ちも特にないんだけど、こういうオープンな空気は挑戦したい人にはありがたいだろうなー。
というわけなんで、音楽修行したい若い方とか、是非楽器持参でニューオリンズ行ってみてください。もちろん、ドラムみたいに持ち歩けない楽器でも、快く演奏させてくれると思います(あのスタントン先生も若い頃は夜な夜なクラブを回ってシットインすることで次第に名前を覚えてもらったんだそう)。ただ、バス・スネア・ハイハット・シンバル各1みたいなセットのすごい人もいるので頑張ってね!という感じでしょうか。